ソロモンの戯言

僕が誰かということじゃなく君がどう生きているかに寄り添いたい

ドウシテという疑問はきっと、愚問以外の何ものでもないんだろうって

俺カノジョ出来ました

 

時任先輩からそんな報告を受けた白井先輩は、もーなんでわたしに言ってくるんだろーねー、なんて言いながらも全然嬉しそうじゃなくて、本当は泣き出したいんじゃないかこの人はってこっちが思ってしまうくらいの顔を、していた。

僕のほうが気を遣ってしまうような。

胸に刺さってなかなか抜けないトゲがはっきりと僕の目にも見えて。

その状況がもう二重にも三重にも苦しくて、あぁなんで僕のところに来ないんだろう僕ならこんな顔させないのに。僕のこと求めてくれたらいいのに。って何回も思った。

 

僕はてっきり、あの2人はできてるんだとさえ思っていたから、だから時任先輩が別の部署に異動になって結構すぐに後輩の女の子と付き合いだしたって聞いたときは最初嘘だとさえ思った。

二人は本当にお似合いだったし、片思いしている分際で言うのもあれだし凄く惨めではあるけれどでも本当に、付き合っていないというほうがおかしいくらいだった。それくらい誰の目から見ても、お互いにお互いのことを好きだったと思うし、信頼もしていたように思えるし、2人だけだから生まれる空気感っていうものが、もう確かにそこにはあった。

僕と同期の三上さんなんて、白井先輩とは張り合えないわーって酔い潰れる直前にそんなことを吐いて飲み屋のカウンターに突っ伏したくらいだったんだ。その後に僕がすごくすごーく首を縦に振って同意していたことは彼女は知らないんだけど。

 

2人はいい感じだった。

何があったかは僕たちにはわからない。

あんな表情をする白井先輩なんだもの、きっと本人にも分かっていないことがたくさんあるに、違いない。だけど一つの事実として、彼らはお付き合いには至っていなくて、時任先輩は別の人と付き合って、そしてそれを白井先輩に報告したっていうこと。

 

お酒の力が、どこまで僕たちを救ってくれるんだろう。

とりあえず飲みましょうかって言った僕の表情は、大丈夫だったろうか。白井先輩以上に傷ついた顔をしていなかったことを、強く強く、願ってやまない夜だ。